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2017年6月6日 | ichikoTV ichikoTV

2017 年 6 月 6 日 のアーカイブ

変貌する街 消えた人々

2017 年 6 月 6 日 火曜日

仕事がら大きな声では言えないが、「街づくり」という、何とも具体的に聞こえるが何とも言えぬ曖昧さも含んでいる言葉が実は好きではない。日々、こうしたことは、敢えておくびにもださないでいたのだがこのところ、街の変化が悲しくてならない。

先般、JRの某駅で、特に大好きな横丁を通ろうとした時、一瞬、道を間違えたと思った。「そんなはずはない」と歩くが、そのゾーンには巨大な白いシートがかけられていた。そして建設の看板には若者向けの専門学校が建設される予定だと分かった。そこには、気さくなマスターと底抜けに明るいママさんがいる、BARがあった。壁に貼ってあった、「ウインナー炒め、目玉焼き」といったシンプルなメニューも思いだす。笑い声も耳に響いてくる。隣りにはラーメン屋さんなど小さな店が並んでいた。

暫し、呆然。腰が抜けるほどに驚いて・・・涙が出た。あの、映画のような横丁が完全に幻となってしまったのか。

「もうトシだからね・・・」と言っていたカウンターBARのマスターも店をたたんで、温泉のあるリゾートマンションに越した・・・と居抜きの店主が言う。店内と当時と全く変わらないが、カウンターに座れば、何もかも変わってしまったことに気づく。あのマスターのシェイクするカクテルがほしいのだ。

いつも、「何にもないわよ」と言いながら、冷蔵庫の中にあるものでチャッチャッと酒のあてを作ってくれたママさんのいる店も店名が変わっていた。「もしや」と思い、休憩時間に煙草を吸いに出てきた隣りの店の男に慌てて訊けば、「ああ、ママね、亡くなったよ。一年前だったかな」と教えてくれた。

それほどの時間、訪れなかったのだ。時が過ぎれば、人々も変わり、街も変化していくのだろう。

 

駅前から大学のある通りに向かって歩けば、若者が喜びそうなお洒落な店が並んでいる。

 

夜中にわいわいと仲間たちと駆けずり回った記憶も、サラリーマンになって、仕事仲間たちの生活も何もかもが学生時代を脱皮したあの記憶も変貌する街がすべて飲み込んでしまった。

 

喉が渇いた。

挽きたての珈琲が飲みたい。

講釈だって大いに結構。

しかし、目に飛び込んでくるのでチェーン店ばかり。

頑なな珈琲店の店主も街が飲み込んでしまったのだろう。

 

家路を急ぐ人々が駅の改札口に飲み込まれていく。