ichiko : 新橋駅 |
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「ちょっと一杯~」とサラリーマンで有名な新橋駅は、時々非日常的なドラマを見せてくれる駅だ。私はこの駅に降りると、妙にそわそわする。予想もしない人と久しぶりに出会うことがあるからだ。そわそわしていても大概が相手から声をかけられる。
「おっ!ひさしぶり・・・」とひさしぶりという音に特徴があるのだ。予想もしない、昔の職場の上司などと出会うと、本当に懐かしくなるものだ。
「わあ!お元気ですか?」
「見ての通りだよ」
えっ?見ての通り?・・・・変わりましたよねぇ。こんな時、私は時間の流れを再認識してしまうのだ。
「お前、昔とちっとも変わらないなあ。お化けか?」
「何をおっしゃいますかぁ。すっかり変わりましたよ。見ての通り、かなり太りましたし・・・・」
そんな、会話の後、「どこへ行くんだ?」「ちょっと打ち合わせに」と所謂、社交辞令の会話が交わされる。別に、お茶するわけでもなく、新橋というのに飲みにいくでもなく、ほんの2~3分の会話で別れる。本当に「久しぶり」に会ったというのにだ。次、どこで会えるかも分からずに、ほんの何分かの非日常が終わる。
つい、そわそわしてしまう新橋駅はなんとも不思議。
ちょっと歩けばすぐこは煌びやかな銀座の街。
昔は営業の接待でよく行った街。二次会、三次会とクライアントの足元もふらついて・・・・ハイヤーに乗せて「有難うございました」。
銀座の夜もすっかり更けていた。
あのクラブやバーのママたちは元気なのだろうか?女優を目指していたというあの彼女は今、どこでどうしているんだろう?あの店のマスター、今流行りのちょい悪オヤジか?
新橋駅前の光と喧騒の波の中を歩いていく。
闇の中に、自信満々で、ちょっと小生意気な30代の私の姿が映る。自信満々!でいるようで・・・実は何かを必死に探していた私が見える。
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