ch05.エンタテイメント : 今村作品のリアリティ |
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カンヌ国際映画祭で2度、最高賞を受賞した映画監督の今村昌平さんが今日亡くなった。
「にっぽん昆虫記」「楢山節考」そして井伏鱒二の小説を原作とした「黒い雨」など、数々の作品を残されたが、私は、犯罪者を描いた「復讐するは我にあり」が印象深い。この映画は佐木隆三の直木賞受賞の小説の映画化した作品。実在の連続殺人犯である西口彰の犯行を克明に綴っていく小説は作家の執拗までの綿密な取材によって書かれたものだ。映画化にあたり、取材魔で知られる今村昌平が更に取材加えている。
何と言っても ロケを実際に犯行が行われた場所を使って撮影するという鬼気迫る方法をとっているところだ。とにもかくにも殺人場面での緒方拳の演技には身震いがしたほどだ。事実に基づいた重いリアリティを表現する時、俳優と監督との間の正気と狂気の鬩ぎあいを感じる。映画が終わった後も、言い知れぬ恐怖を与える凄みは今尚、私の中の映画リストのベスト10。
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