ichiko : 微笑み |
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その日の昼下がり、瀟洒な洋館、ピアノの生演奏の流れるレストランにその人生の大先輩は招待してくださった。静かな、優雅な時間が流れていく。「ああ、こんな時間はひさしぶりだなぁ」と心の中が温かくなっていくのを感じていた。
この数ヶ月は、事柄や人々に対して、いろんな見方をしてきてしまっていた。人は環境が少しでも変化していくと、それまでとは違ったものの見方をするようになったりする。だからこそ意外な発見をする楽しさもあるのだが・・・。
「吉田さん、仕事にはねえ、追われてはいけませんよ」と人生の大先輩が言う。仕事に追われてはいけない?頭の中では十分理解している。追われちゃいけない、追うものだと。しかし、実際にはどうだったか?思い出せば「追われていた」ではないか?なるほど、人とは実に流されやすい生き物だということが分かる。
大先輩の長い長い人生の道程には、私が想像も出来ないほどにいろんなことがあった。ひとコマ、ひとコマがドラマだ。そして、その時代に流されてしまうこともあったであろう。そんなドラマを聞けば聞くほど、自分のものの見方が一瞬でも歪んでいたことが分かる。「ああっ」と声が出てしまいそうになる。
「今日は、新しいスタートのお祝いを」と声をかけてくれた。窓の向こうに緑が眩しいほどだ。赤ワインがグラスに注がれた。そうか・・・・新しい出発。
「新しく、事業をするとは・・・業ですねぇ」と大先輩が笑った。「業ですかねぇ」と久しぶりに自然に微笑んでいた自分に気がついた。
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