ichiko : 海につつまれた日 |
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その日、海を見下ろすホテルのレストランにいた。話の決着はまだつかないのだろう。もう少し先になるのだろうか?・・・・・ しかし、“もう少し先”という時間は、三ヶ月?半年?か。そんなサイクルが最近の自分の中で出来上がってきている。一年12ヶ月をそんな数で考えていく癖が付き始めたようだ。
今の仕事は、ブロックのように一つ一つ焦らずに積み上げていくしかない。いろんな人が時に“自分時間”感覚で口を出す。仕方ないことだ。予想もしない、設計変更だって起こる。しかし、あくまでも冷静に、それが全てだ。焦燥感を感じた時に全ては崩れる。
眼下に静かに波立つ海が見える。
あっ!魚が跳ねた?
見間違いか?
光の屈折?
違う、息苦しくなった魚がはーっと跳ねたんだ・・・・
ほんの数秒だが、気持ちが海の中に入りこんだ。
たまたまだった。真っ白な船体に蒼い「海」の文字が印象的な旅客クルーザーを見つけた。緊張する長い打ち合わせの中で、静かに自分が擦り切れていくのを感じていた時だった。
暮れなずんでいく・・・・。空が少しだけ重たい。そんな空気を頬に感じながら、埠頭からそのクルーザーに乗った。全く予定はしていなかったことだ。本当に咄嗟の行動だった。
夕闇迫る頃、緊張感がとけていき、潮風が心地よい。船内はBARになっていた。窓際の席にすわり、カンパリソーダを注文した。夕暮れの船内で、それはルビーのように揺れた。
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