その日、ある新しく発刊されたペーパーを見ていた。
「対象の読者は?」と聞くと「年収が~千万円以上の富裕層」とのこと。ページを捲っていくと、やはり超一流の広告が露出されている。
「なかなかだね」と言うと「んー」と一言。
  最近は年代はもとより年収で読者をきりわけていくことに、何とも妙な違和感を感じてしまう。それこそ今、涎がでそうなディスプレイ広告をみても、昔のような感動がなくなってしまった自分は本気でいかれちゃったのかな?と思う。
  「確かに、完成された感じだけどね」と長く新聞の営業をしてきた彼が言う。「感じだけと?それで?」とページを捲り続けているが、何か感動が本当になくなっている。見事な出来?のメディアを手にして「その年収がない読者の手には渡らないんだね?」と私は呟いた。彼は頷いた。
  


  渋谷、新宿・・・・雑踏で、のどを嗄らしながら若者が無料のコミック、フリーペーパーを配っている。暫くその様子を見ていた。もう、誰も手にしようとはしない。そして、大手町の地下道で人気のフリーマガジンのいれかえが行われていた。一人の男性が手こにとり、そしてラックにもどした。いずれ、なくなるのだが、あの頃のように誰もが珍しそうに、そして“待ってました!”とばかりに手にとることはない。哀しいかな、ゴミ箱にちょっと見て、ホッと捨てる人の姿もある。取材、編集、執筆、撮影と膨大な時間が費やされているというのに!嗚呼。


  私はブランケットの16ページの新聞を読み終えた。
「“広告営業をやってきた人間は過去しか振り返らない。俺は退き際を間違えた”・・・そんなことを~さんが言っていたよ」と彼の口からことばが洩れた。まさに、大先輩の言葉に“真実というかガツンときた”と溜息をついた。
  私は、バッグの中にその新聞をいれた。もしかしたら?帰宅しても、再度読まないのかも知れないのか?・・・・そんな気持ちがした。
   

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このページは、ichikoが2007年9月30日 23:06に書いたブログ記事です。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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