在宅ホスピス医である内藤いづみ先生の講演会に出席した。内藤先生は現在、生まれ故郷の山梨県にある「ふじ内科クリニック」の院長でもある。外来患者の診察を終えると白衣をぬぎ、自転車に乗って癌などの末期などで「最期の時」を自宅で過ごす人々の元に行かれる。
  私も実父を末期癌で亡くしたが、父の最期は自宅ではなく、とある病院の病室であった。確かに、家族や親戚や親しい友人に看取られての最期ではあったが、約一年の壮絶な癌との闘いがあった。その一年は家族にとっても、時間という感覚さえなくなるほどの辛い日々であった。しかし「おじいちゃん、にこっと笑って、おめめに涙が出ていたよ~」と当時、そう言った小さな娘の言葉が今でも心に残り、「ああ、それでよかったのか・・・・」と思っていた。
  人生の最期を家で家族とともに、自分らしく、そして限りなく痛みを感じることなく過ごすためのホスピス医療とは、本当に理想でもある。数多くの現場に立会い、数多くの人々にかかわってこられた内藤先生の言葉ひとつひとつに実にあたたかい温もりを感じる。
  最近では「いいお孫さんですね」「いいお子様に恵まれていますね」などと言うと、実は、その方々はホームヘルパーさんだったりケアマネジャーであったりするという。二人きり、若しくは一人ぽっちの老人が如何に多いということかも知れない。
  末期という現実と向かいながらも、一生懸命に孫たちのために花の種をまくおじいちゃん。幼稚園バスに乗り込む孫に一生懸命に手を振るおばあちゃん。病院を離れ、自宅に戻った時、愛する家族とともに「時」を過ごすことで新たに自分の居場所、生きるすばらしさというものを実感されていく人々の姿。
  講演会場にいらっしゃる一人ひとりの後姿を見ながら、時折、涙をぬぐう方もいた。それぞれの思いに、あつい涙が流れたのだろう。
内藤いづみ先生の「ふじ内科クリニック」

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このページは、ichikoが2009年3月26日 23:05に書いたブログ記事です。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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