ch12.その他 : 男と女の30行


   新聞社に入社して暫くの間、当時の編集長に、兎に角文章を簡潔にまとめる訓練をされた。大学時代は研究論文的?なものにあーでもないこーでもないと小難しく、いや今思えば稚拙な理論をこねくり回していたので、自分にとってはかなりのショック状態の日々であった。
  くる日もくる日も・・・。他の編集の担当者は「なんだぁ!」と原稿を投げつけてきた。(こんな時代もあったのね)あまりのショックに階段の踊り場でワアワアワアワア泣いた記憶がある。当時は20代の若い娘だったからいいけれど、今じゃねぇ。
  そしてある時、編集長が「よくなったな」と一言呟いた。短い文章とはそれほどに難しいものなのだということが分った瞬間だった。


  中谷彰宏のメルマガくんでパープル@AN-Jさんがジュール・ルナールの小品、「老夫婦」を読んだ話しが書いてあった。80歳の夫と、70歳の妻との話を30行ほどの、ごく短くまとめた作品だ。


 2人が離れて座っているので、「もっと近寄ったら」と
 言われて、妻のほうが、「角(つの)がぶつかったらイヤ」と
 答えます。
 え、じゃあ、2人とも、角が生えてる?
 夫のほうは、答えます。
 「私には生えているかどうか分からないけれど、
 妻には角は生えてないよ」
 妻のほうは――黙ったままです。
 自分に角があるか、夫には角があるか、黙秘です。

   老夫婦の人生が凝縮した30行だ。ただそれだけの話しだが、パープル@AN-Jさんは「滑稽なような、それでいて恐ろしいような話」という。私はピカソだったら、ダリだったらどんな絵を描くのだろうってふっと思ってしまった。
  男と女とは年はとれば体は老いていくものだが、感情の根っこみたいなものはいくつになっても変わらないものだ。別段、これが20代の若い男と女の間でも同じものだろうって思う。でもなかなか30行の中にはまとめられないかも知れないな。これが時を経て・・・という瞬間なのだって思えてくる。

  巷ではタレントの沢尻エリカさんの離婚危機について報じているが、嫌になったらもうしようもない。あんなに熱烈に惹かれていたとしても。高熱が下がって「あれ?」という時間だったのだろう。今後は素晴らしいそしてちょっと怖い30行を書けるような男と女のいい関係を作ってほしいなと、大変お節介ではあるが思う。


カテゴリ

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 男と女の30行

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://210.196.86.5/~blog_mt/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2052

コメントする

このブログ記事について

このページは、ichikoが2010年4月28日 08:33に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「男の顔は・・・履歴書か?」です。

次のブログ記事は「いすみ鉄道!頑張って!」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

プロフィール

ichiko.tv

ichiko.jpg
吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

メール

ご意見・ご感想はコチラまで!

著書紹介

「にっぽんの旨い!を取り寄せる」
食文化研究家・永山久夫さんの全国津々浦々のお取り寄せグルメ100選。「おいしい」の裏側にある生産者の思いにも触れられる一冊。未知の「味」と出会える。
価格1,470円(税込み)

「横浜中華街行列店の秘伝レシピ」
横浜中華街で特に評判の高い厳選29店の味を家庭で再現するためレシピ。秘伝の味を再現するためのコツや工夫を惜しみなく公開。プロの味が家庭で再現できるか?について検証した。
価格1,470円(税込み)

「横浜中華街オフィシャルガイドブック2005-06」
独立して初めて関わった思い出のガイドブック。横浜中華街発展会協同組合の325店全店完全取材! 「食」と「文化」、「歴史」そして華僑・華人の「生活」に触れられるオフィシャルガイドブック。あの燃えるような夏の取材の日々は良かった。
価格950円(税込み)

「和食のいろは」
和食のおいしさを支える基本をあらゆる角度から紹介。プロに教わる目利きのコツから料理研究家直伝の和食レシピ満載。ずっと会いたかった道場六三郎さんをインタビュー。
価格1,470円(税込み)

「マヨネーズってわっはっは」
 親友のかっちゃんこと小林カツ代さんのマヨネーズを使って驚きレシピを紹介。遊び心がいっぱいのレシピや薀蓄も盛りだくさん。
価格1,470円(税込み)

「浅草散歩ガイド」
一カ月に一回は必ず遊びにいく浅草。路地裏は最高。どうしても「浅草のガイドブック」を作りたかった。浅草今昔物語から「食べる」「歩く」「憩う」「買う」浅草が満載だ。
価格1,260円(税込み)

2013年5月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31