ichiko : 花開くときを信じて |
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一枚のカードが届いた。「オーダーサロンをオープンしました」という文字。
2年ほど前になるのだろうか、アイムという女性・主婦のための学校の卒業生の小川さんと校長の長井さんの経営する店で会った。控えめな楚楚とした美人の女性だった。その小川さんが、海の見えるオーダーサロンをオープンしたという通知だった。
7月のはじめ、自宅兼アトリエに是非来てくださいという内容だ。
「何か見えますか?」と小川さんは、目をこらした私に訊いた。
「見えるというより、聞こえたのよ、海の波の音がね・・・・」と私は言った。
彼女の背後になんとも心地良い、波の打ち寄せては引いていく音が聞こえ、そして、なにやら不思議な「音」までが聞こえていた。ジャン・・・・・?何?
小川さんは、はっとした表情になって「私、海辺で育ったんですよ、それのことかしら?」と考え込んでいた。
暫くして、私の耳の奥というより、頭のどこかで「ジャンホエホエ」と奇妙な音がした。このことを皆に言うと、大笑いしたあと、怪訝な表情で押し黙った。気になった私は台湾の友人にすぐ電話をして、このことを話した。すると、彼女は「ははーん」と言い、「名前かな?」という私に「そうかもね」と答えた。
暫くは怪訝な表情だった小川さんは、その日から、「ジャンホエホエ」というネームを持つようになった。不思議な話だが事実。それから、お茶をしたり、食事をしたり。私は彼女のポテンシャルを信じていろいろ語った。アドバイスもした。その度に彼女は自信がついたのか、ヘアスタイルも服装も全く変り、美しさに磨きをかけていった。表情は輝いて、明るかった。発言も本当にはきはきと心地よいものに変わっていったのだ。
その日も近いのだろう・・・・・漠然と私は感じていた。
そして、今、こうして手にしている一枚のカード。彼女の洗練された感性と手先の器用さで、美しいコスチュームが紡ぎだされていくのだろう。今、彼女は、女性を最高に美しく見せるコスチュームの作家になったのだ。小川さん、いやジャンホエホエ、サロンオープンおめでとう!
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