新宿の高層ビルのある喫茶ルームで仕事の打ち合わせをしていた。よく晴れて青い空が気持ちが良い。
  「昔ねえ、テーブルの横に一台ずつ電話があった喫茶店があったのを知っている?」と彼女が言う。「昔?」「そうそう昭和40年ごろかしら」と。「古っ!」と笑いあう。

  いやいや、この数年で仕事の仕方が完全に変わったのだ。例えば、取材をし、原稿を書いてそして印刷所へ持っていき・・・ゲラ刷りができて、校正をして・・・・。
先輩の記者の記事の仕上がりが遅い場合は、何回も行ったり来たり・・・。膨大な仕事量を必死にこなしてきた時代があった。
調べ物だって、今は簡単にインターネット検索をするではないか。百科事典や辞書・事典などひかない、いやもうひけない世代もいるのだろう。どう調べたら、誰に聞いたら、誰を訪ねたら・・・そんなヒントや人脈に辿り着くことさえ大変な時代があった。
  思い出すと本当にふふっと笑ってしまいそうだけど、ファックスが導入されたあの日は、みんなで手をたたいてとびはねた。「すっ!すごい」といいながら。そして、本当に先方に原稿が届いているのか、確認の電話までした。電子メールが始まった頃だって、「届いた?」と電話で確認をしたことがある。
  
  今や、喫茶ルームにいる殆どの人がそれぞれののスーツのポケットにまたカバンやバッグの中に電話を持っている筈だ。喫茶店で「お客様の中に~さまいらっしゃいますかぁ?」という呼び出しやもホテルのロビーに「~さま」という札を持ってベルを鳴らしながら歩くホテルマンの姿さえ、最近は皆無だ。静かにみんなが携帯メールで黙々とコミュニケートしているからだ。
   会社に戻っても昔のように、デスクの上を埋め尽くす「伝言メモ」は殆どない。何日も留守をしていた時などは、メモ用紙がカーテンのようにデスクに垂れ下がったいた。今は静かにパソコンでメール確認をするだけ。返信もRe ですんでしまう。

   だからこそ、企業での内部告発なども静かにメールで行われる。ある日、いとも容易く告発できるのだ。ライブドア事件にしても、東横イン事件にしても、ある日、一通のメールで悪事はさらけ出される。性善説にしろ性悪説にしろ、便利な世の中を人間は生きている。最終判断はその人間の心の中の「基準」でジャジされる。そして、いとも簡単に。昔々はすごーい怪文書なるものが密かにまわった時代もあった。何とも、おどろおどろしい・・・

 帰り道、電車の中に携帯電話の広告が目に入った。

何回話しても何時間話しても話したりない
もう二時間も話してるね
あなたの一番好きなあの人と
思う存分メールと通話し放題

そうか・・・ひと月315円で済むんだ。毎日毎日話して話して・・・・・二人の会話はいつまで続くのだろうか?会って話して話してみれば?。お互いが携帯がなく、待ち合わせに相手が遅れた、来なかった・・・そんな時に君たちはどうする?気持ちの「揺れ」さえ分からないだろうね。
会った時に、いつでも話せる、そんな考え方はやめて、たまには本当の気持ちを相手の目を見て話してみようよ。それぞれが携帯電話を持っていなかった時代の恋はもっと真剣だったよね。

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このブログ記事について

このページは、ichikoが2006年2月 5日 16:36に書いたブログ記事です。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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