人には「公」と「私」があるが普通は、殆ど「公」の顔としか会わないものだろう。どんなに親しくなっても、きちんと伝えることなく、人は曖昧のまま過ぎ去るものだ。


2007年3月に亡くなった城山三郎さんの本は何冊か読んだものだが、昨日、1月12日の夜、テレビドラマで『そうか、もう君はいないのか』を見た。「落日燃ゆ」「男子の本懐」をはじめ、何冊か読んだが、これまでにまさに城山三郎さんの深い「私」の部分は初めて知った。


  城山さんの奥様の容子さんは、ある日、体調が悪く、診察を受けた。癌とわかってからなんと僅か四ヶ月。2000年の2月に亡くなったという。享年68歳。やはり若い。若すぎる。何故か実母の事を思いだしてしまった。そして奥様の七回忌を終えて城山さんも亡くなった。この本はご自身が亡くなる半年ほど前から、ようやく本腰を入れ始めて書いたものだという。そんな事ってあるんだなあと思った。この不思議な感覚。
  
  印象に残ったシーン。奥様が検査に行き、その帰りを心配して待っている。そこに、奥さんの、呑気な鼻唄が聞こえて来る。それは、癌が呆れるような明るい唄声。しかし、夫の姿を見るや否や、崩れ落ちそうな妻を抱きかかえ「大丈夫だ、おれがついている」と言う。何が一体大丈夫なのか?わからぬままに「大丈夫」を連発して妻の背を叩く。それから、夫婦の「死」へ向けての過酷な日々が始まるわけである。
 
  「死」ということなど10代や20代では全く「未知」の話か?仕事に夢中な30代も考えもしないだろう。しかし、どんなに健康であっても、病弱だと言ってはしょっちゅう病院通いをしていても、人はいつか必ず死ぬということ。
  最近になって、私より年上ではあるが、団塊世代の友人たちが時折、まるで人生にもエコロジー?と言ったらおかしいが、無駄なくスッキリ、サッパリと終わるためにはどうすべきか?何をどう整理するか?最後はこう言いたいよ!なんて言い出す。また、ある友人は、スポーツ観戦の後の興奮した後に、空を仰ぎ「宇宙の果てって一体、何があるんだろうなあ?」なんて少年のような事も言い出す。「いつか、弔辞を読むときがあるんだろうな?」なんて言いながら「今、言ってもしようもないな」と腹をかかえて笑いあう。友人たちの中で、誰が先で誰が後なんて誰も分かりはしない。神様が知っているだけだ。しかし、精一杯、仕事をし、家族を守り、友情をあたためながら飲み、未来を語りそして笑いあう。いろんなアクシデントやトラブルでズタズタになろうとも、友達は変わらずにそれぞれが傍にいる。経済危機だ、政治不安だと山積みの今の世も、友情とは本当に培ってこられたものだと思う。支えにもなる。
  しかし、何れの日、残されしものは皆、呆然と「そうか・・・もう、いないのか」と思う日が来るのであろう。人として生まれたのだから、どんなにもがいてもしようもないことだが。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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