ch12.その他 : 「森 林太郎トシテ死セントス」 |
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人の人生はそれぞれでかまわない、いやそれでいいと思っている。しかし、所謂、定年後の特に男性たちの生き方を見ていると改めて人生について考えてしまう。未だ役職にこだわって、しがみ付く人、趣味に生きるといいながら会社に行くことが趣味であり、いざその時から何もすることが見つからない人、こんなにも自由だと朝から酒を呑み、糖尿病になった人。勿論、素敵な生き方をしている人々もいるが、この違いは一体どこから生まれたのだろう?と思うのだが・・・。
さて、文学者である森鴎外は大正11年7月9日に60歳で亡くなった。医者であるがゆえ?己の健康状態が分かり、決して診察を受けることなく、腎萎縮で亡くなった。鴎外は死の3日前に、友人の賀古鶴所に遺書を口授して書きとらせている。遺言の一節に余ハ少年ノ時ヨリ老死ニ至ルマデ一切秘密無ク交際シタル友ハ賀古鶴所君ナリ コヽニ死ニ臨ンテ賀古君ノ一筆ヲ煩ハス」と言うほどの友人関係の人がいたということ。そして何よりも「宮内省陸軍皆縁故アレドモ 生死別ルヽ瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辭ス 森 林太郎トシテ死セントス」という一節に、人の生涯の幕引きに思うことの深さを感じるのだ。名誉も何もかもを捨て「森 林太郎トシテ死セントス」といった鴎外の気持ちを思う。亡くなる前に「ばかばかしい」と言ったと言われるが何をもって何に対してばかばかしく思ったのだろうか。たまたま、いろいろなアクシデントもあり、男爵になれなかったということは、鴎外のとって一体何だったのだろうか?とふと思う。
今年は鴎外生誕150年の年である。
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