人とのご縁とは実に不思議なものだと思う。もう随分前のことだがフジサンケイグループにいた頃。中堅社員研修に出たことがある。何日かの合宿の中でグループ分けがあり、研修は進んだ。
  その後もそのメンバーとは長い付き合いがある。各社からの参加であったから年齢が一緒ではない。しかし、どういわけか、私たちのメンバーは研修後も定期的にみんなで集まってワイワイといろいろな話しをした。

  メンバーの一人のSさんが3.11のあった年に癌で亡くなった。定期的な集まりがちょっと滞ったその年の暮れだったか、皆がそれぞれの理由で慌ただしくしているうちにSさんと連絡が何ともとりづらくなっていた。「海外に行っているのではないか?」「忙しいんではないか?」などと言っていた。電話をかけてもコールするばかり。メールも返信がなかった。「手紙を書いたら?」と言って、リーダーが手紙を書いた。今思えば全て納得できるのだが、当時はそんな異様な時間が過ぎたのだ。いろいろな話をパッチワークのように繋げていき、漸く、ここになって当時、奥さんが退院をされた後に彼が急に体調を崩した、そんな事実が分かった。

  Sさんはその年のはじめに長年の自分のテーマを原稿にまとめあげていた。『稲荷山王朝の謎 ワカタケル大王とヲワケノ臣の謎を追う』。それを「出版したいなあ~」と同僚に話していたらしい。しかし癌が発見されたのはその直後だったそうだ・・・しかし、既に末期だった。「誰にも言うな!」「決して言うな」という彼の当時の思いとその厳しい一言が、時間をかけて真面目に真面目に守られた・・・。

  突然の死は何もかもを分断してしまった。しかし不思議なご縁はパワーをそのまま秘めていた。この度、Sさんの奥さんから原稿のUSBを弟さんから受け取ったという連絡に我々は小躍りした。送られてきたUSBには打出の小槌のストラップがついていた。ふれば思いがかなうか!!そんな感覚だ。
  テーマをコツコツと生真面目に取り組み、時間をかけて歩いて、そしてまとめた原稿を目にした時、涙が溢れた。研修の時の彼の姿が浮かぶ。そして結果としては最後集まりの時になってしまった集合写真を見ながら、「こんな思い出になるとは・・・!」そう思い再び胸の奥があつくなった。
  今、Sさんの原稿を何とかまとめようとメンバーで話して進めている状況である。時間が経ち、それぞれのメンバーがまた違った道を歩みだしているが、Sさんへの友情は何としても形に残したい、そんな気持ちでいる。


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このページは、ichikoが2013年7月23日 17:33に書いたブログ記事です。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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