ch10.生活 : 成人式 |
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次女の成人式だった。区で実施される「成人の日のつどい」がオーケストラによる音楽成人式で、式典には家族も参加できるということで、楽しみにしていた。ワーグナーのニュルンベルグ・マイスタージンガーの前奏曲で幕が開いた。「君が代」斉唱。区長や区議会議長の挨拶もヘンデルの「水上の音楽」やバッハの「G線上のアリア」などがバックに流れて紹介される。
会場は歓声と華やかな振袖姿でみちている。スーツ姿の男性に混じり、派手な色合いの紋付袴姿の男性もいる。こんな彼らがこの時期になるとマスコミで報道されているように、妙なはしゃぎ方をするのではないか?と少し心配な気持ちもしたが、「新成人の誓いの言葉」には明るい掛け声がかかり、小学生による合唱には、これまた「みんな、ありがとう!!」という大きなお礼の声が会場内に響き、式典は滞りなく進行した。エルガーの「威風堂々」でフィナーレとなった。
机の上に、30年も前に写真館で撮った自分の成人式の写真がある。不思議と色あせることもなく、二十歳の自分の姿がある。時間がそこで止まったかのように。当時、母は「これは、いずれお見合い写真に・・・」と言い、大振袖を誂えた。そんな時、父は「お前の結婚相手は自分で探せ」と言い、くる縁談話には、はしから断っていったことを思い出した。
月日は流れる。いつの日か、私は自分で探した相手と結婚をし、ついに二十歳の写真は見合い写真として使うことはなかった。そして、今、二人目の娘の成人式を祝う年となった。既に嫁いだ長女と連れ合いが、妹の成人式を祝うために駆けつけてきた。振袖姿が本当に初々しい二十歳の娘が嬉しそうに微笑んでいる。 風はまだ冷たいが、清清しい初春の一日だった。
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