ch10.生活 : 最後の居場所はどこ? |
||||
友人で映画監督をしている槙坪夛鶴子さんが介護をテーマとした映画「母親のいる場所」を作った。4月9 日から神田神保町の岩波ホールで上映される。ジャーナリストの久田恵さんの「母のいる場所~シルバーヴィラ向山物語~ (文藝春秋刊)が原作だ。久田恵さんの実体験によるもので、介護する者される者、それぞれの自立とは何か?介護とはどういう事か、ふさわしい最後の居場所はどこなのかを探る。フリーライターでシングルマザーの役を紺野美沙子、厳粛な母親役を馬渕晴子、仕事一筋で頑固一徹の父親役を小林桂樹が演じている。
試写会があり、久しぶりに槙坪夛鶴子さんに会った。彼女とはもう、30年近くの付き合いになる。クランクインした後も、また上映が決まった後も、全国をめぐっている多忙な身だ。
目が合った時、本当に懐かしかった。
思い出せば、持病のリウマチが悪化して、何度となく、面会謝絶、絶対安静が続き、心配した時もあった。今は車椅子でメガホンをとっている。本当にしんの強い素晴らしい女性なのだ。決して弱音などはかず、いつもいつも前向き。現場には、高齢のお母さんさんも彼女の車椅子をおしてくるそうだ。
「母も映画のシーンに何回か映っているのよ、でも誰がホームの人で誰が役者さんか分からないでしょうね」といい彼女は笑った。
人は誰でも必ず「老い」を迎え、病気や障害を抱えたり、不安と孤独から痴呆になったりする可能性がある。試写会の後に、エレベーターの中で何人かの関係者が話していた。「介護なんて、あんなきれいごとじゃないわよね」と。
何の望みも夢もなく、ただ、介護される側と介護するものが、疲れきり、自分の気持ちさえ失いかけるほど、そんなシーンを撮ったとして果たして、観客にその辛さ分かるものか?たとえ、実話を基にしていても、映画の世界はフィクションであってもいいと私は思う。100人いれば100人の介護がある。 “男女共同参画”と叫びながら、依然女性が担っている現状であることは分かる。老親介護で家族崩壊の岐路に立つ前にもう一度、考えてみよう。 辛さも哀しみも嫌悪も。そして、慈しみ、優しさ、そして感謝の気持ち。人として生まれて、全ての感情を味わうのが「介護」であると、私は、浅いかも知れないが自分の実体験を通して得たことだ。
コメントする