ichiko : はじめの一歩 いつまでも大切に |
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銀座にある道場六三郎事務所で打合せが終わり、地下鉄丸ノ内線に乗った。就職したばかりの女性と、その上司だろう男性を見た。彼は女性に対して名刺の差し出し方を一生懸命に教えている。つい、昨日まで学生だったようなグレーのスーツ姿が初々しい女性が、ぎこちなく真似をしている。赤坂見附の駅に着いた。二人は慌てて降りた。
彼女はこれから一生懸命に仕事を覚えていくのだろう。
そう、これから・・・・・残業に疲れる日も出てくるだろう。接待の席では「初めてのこと」を多く経験するかも知れない。理不尽なことに苛苛することもあるかも知れない。仕事が面白くなって、ラインで活躍しているうちに予想もせず、周りから妬まれることもあるかも知れない。恋人との連絡もままならず、別れがくるかも知れないし、新しい恋人ができるかも知れない。急に見合い話で、結婚して、子育てをするかも知れない。
あれこれあれこれと頭に浮かんできて、つい微笑んでしまった。
22歳の時。入社したての私も当時の上司と丸ノ内線に乗って、赤坂見附駅で降りて、その後青山一丁目に行ったことを思い出した。当時の私は、今の「私の姿」の1%も想像していなかった。
初めてのクライアントに会い、ドキドキした。名刺を差し出し、何が何だかわからぬうちに一瞬のうちに時間が過ぎ去った。懐かしいひとこまだ。いろんな積み重ね。人生の断片の数々。嫌なことも楽しいことも辛いことも嬉しかったこともなにもかも、静かに静かに堆積して、今の自分がいる。「はじめの一歩」が大切なんだと最近はいろんなことがあるたびに思う。会社でも人でも、時の流れで変貌していくのを見たり聞いたりするたびに思うのだ。
出口で、ちょっと彼女が躓きそうになった。緊張しているのだろうか?
心の中で「頑張って」と囁いた。
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