介護の取材で老人ホームをまわった。現在、介護が必要な状態とされている高齢者は全国で約380万人。民間の経営する有料老人ホームは都心部で急増し、平成19年度には400ヶ所をこえて特養を上回るという。
  今回、私がたずねた特養は、恵まれた環境の中にあり、そこには、それぞれの人生を生きてきた表情があった。住み慣れた家を離れ、ここが「終の棲家」ということなのでろう。
  
  しかし、人にとって「終の棲家」とはなんなのだろう?
一週間ほど前に、介護をテーマに映画「母のいる場所」の監督をした友人の槇坪さんと話していた時、「映画の最初の舞台になっていた家があったでしょう?あそこは撮影後に取り壊されてしまったのよ、残念ね・・・」という。ロケでお願いした時は、おばあさんが一人暮らしをしていたらしい。「まあ!もったいない」と言うと「しようもないのよねぇ」と言う。
年取って、一人暮らしをしていると、何かと不便になることが多い。住み慣れた家でも、離れなくてはならない時もあるのだろう。相続した家族も又、税金も含め、古い家を保存していくということもままならないのだ。
  
  今、私の自宅は、平成2年に土地を購入し、家を建てた。当時、住人は6人。その家で休み無く仕事を続け、子育てをし、両親の介護をし看取った。長女が就職し一人暮らしをし、そして嫁いだ。次女が大学に進学し、一人暮らしを始めた。夫が長期出張に出かけた時などは家に私一人という時も多くあった。一人で住むには広すぎる・・・・ふと思う夜もあった。一人で暮らしていた姑をよんだ。
  いずれはマンションに住み替えるかなあ?というと、「私にとって実家は大切なんだから、絶対にそのままにしておいてね」と嫁いだ長女はいう。そんな彼女の言葉を大切にして、子供部屋は当時のままにしている。勉強机や本の数々。そのまま残っている。
  
  
   最近、ふと気づくと、自宅の周囲の家が取り壊されていく。この数年間で更地になったところは多い。「あれっ」と思っていると、コインパーキングになっている。四方八方にある。
 コインパーキングは約12年ほど前に、所謂、バブル経済が終焉を迎えた頃、都心の不良債権化した土地や都心の遊休地を中心に機械を設置するだけで事業として始められた。こんなに増えているのは、それだけ土地の有効活用方法として有効な方法であるのだろう。
  勿論、回転率によって収益率も変るが、場所によっては一台あたり月平均6万円から10万円売り上げるような立地も少なくないらしい。月極め駐車場と異なり、コインパーキングは基本的に運営会社に業務を委託し、設定した賃料で借り上げてもらえるので売上げを気にする必要がないというメリットがあるらしい。
  先日、荻窪の一等地に、「祖母が亡くなった」ということで約100坪の土地を更地にしとて売り出した方がいた。2区画にしていたが、1区画の価格は約9000万円。うわもの建てたら、何億もかかるのだろう。果たして、誰が購入するのだろうか?
 
  我が家の裏手も今、更地になったままである。一体、どうなるのだろう。一億近くの土地はなかなか売れるものではない。・・・・となると、また、コインパーキングができるのだろうか?そして街の美観は次第に消失していくのだろう。
  歯抜けになった街。そこに、小刻みに見も知らぬクルマが出入りする。私の「終の棲家」はコインパーキングの挟まれていくのだろうか?今はけんとうもつかない。
  「垣根の垣根の曲がり角」・・・そこにはコインパーキングが点在するのか?どうしたら、街の美観が保たれるのか?今、それが私の中の大きなテーマだ。  

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このページは、ichikoが2005年5月 3日 16:12に書いたブログ記事です。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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