ichiko : 未来を語れる国になれば・・・・と。ふと・・・ |
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先日、打合せが終わり、地下鉄から山手線に乗り換えて帰宅しようとした夜のこと。打合せ終了の後、仲間と1時間ほど軽く日本酒を飲んで、そして話した。その快い酔いのせいか、何故か乗り換えることさえ面倒になっていた。時計を見るとあと少しで午前零時だった。
改札口に行かず、そのまま駅前のロータリーからタクシーに乗ってしまった。全身が鉛のように重たく感じた夜だった。
ドアが開き、私は深く座ると行き先を告げた。
その時、「あああっ・・・」と運転手さんが深い深いため息をついた。少し慌てて「どうかしましたか?」とたずねると「やあ、本当に今日は草臥れましたよ」と言う。私は軽く笑いながら「全くです」と答えた。クルマはゆっくりと走り出した。
「今日は何時までお仕事なんですか?」
「午前4時までですよ」
「朝からお仕事だったのでしょう?」
「ええ、午前7時からね」
「それは、大変だ・・・・」
「もう、65歳をすぎましたけどね・・・こうして働かないとなかなか生活も厳しくてねぇ」
聞けば、身分はアルバイト?だという。歩合で稼ぐしかなく、でも、この時代、なかなか水揚げは厳しいそうだ。そして、何よりも体に疲れが残ってぬけないことが辛いという。
老後の収入と支出。ゆとりある老後の生活を送るために必要な額は、月額約37.3万円といわれている。老後の夫婦世帯の支出額平均は約月額25.6万円。
一方、公的年金額のモデル金額は、サラリーマンのモデル世帯は夫婦合計で月額23.3万円、自営業者世帯であれば13.2万円。
サラリーマン世帯も自営業者世帯も、公的年金だけではゆとりある老後の生活費には全く資金不足なのだ。自営業者世帯では約24万円ほどの不足となる。貯蓄の取り崩しや利子・配当の所得などもあるが、大概の不足分は就業に頼ることとなる。
「若い社員は基本の給料もまだいいんですよ。それに若けりゃ、頑張りだってきくんですよ」というと、運転手さんはまた、深いため息をついた。でも、少しの時間でも話しているうちに、声に明るさも出てきた感じもした。安心した。
「未来が語れる国にしたいものですね」・・・・・・いつもいつも敢えて口には出さないが強く思っているコトバがつい出てしまった。
クルマが止まった。料金を支払いながら、私は運転手さんの横顔に「頑張ってください」と声をかけた。「有難うございます」とかえってきた。
テールランプが次第に闇の中を遠くへ消えていく。夜中から明け方の街を走り走り・・・午前4時まで、まだまだ運転手さんの仕事は続くのだ。
「どうぞ、体に気をつけて」。そう強く思いながら、私は自宅へ向かった。
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