ichiko : 思い出の一冊


   実は ロードショーから観たい思っていた三島由紀夫作『春の雪』。
「一緒に行く!」と言う次女の都合とあわせていたもので、随分と時間が経ってしまった・・・・


 夢と転生という壮大なテーマを四部に分けて構成する「豊饒の海」。「春の雪」は起承転結でいうと「起」にあたる作品だ。この後、「奔馬」、「暁の寺」、「天人五衰」と続く。
 最後の「天人五衰」が三島の遺作となった。脱稿した直後の1970年11月、「楯の会」学生長森田必勝ほか三名の同志と、東京・市ヶ谷の陸上自衛隊で「天皇陛下の万歳」を三唱して古式に習い割腹自決した。45歳という若さだった。
  あれから、何年の月日が経ったのだろうか?あの日、高校からの帰宅途中だったと思う。この知らせを聞いて、私は暫くプラットフォームで立ち止まっていた。

 同性愛者としても有名であった三島の描く恋愛。母の女学校の同級生のKさんとも親交があったと小学校の時に聞いていた。Kさんが「男装」して三島由紀夫とパーティーに行ったなどという話を耳にした時は、単なる「変な人」という気持ちしか生まれなかった。


  何年か経ち、手にした一冊の本。清顕と聡子の悲恋。自尊心ゆえに完璧を求め、その不可能性を愛するがゆえに破滅しなければならなかった清顕の心、そして翻弄されつつ次第に揺れ動く心と、道を踏み外していく聡子の欲求。


  しかし・・・・不思議なもの。時間は人をやはり成長させる。高校の時には感じ得なかった感動で映画館を出た。
  昔々、ある人から「君はイメージが似ている」と言われてからずっと、私の頭の中に入ってしまっていた「聡子」という女性名。肥えてきたし、すげずけ物言うようになり・・・・今、そんな「聡子」は既に喪失してしまっているけれど。そんな思いもあってこの作品は私にとって印象深い一冊だ。

  オープニングの景色の描写は原作にほぼ近い。そして宇多田ヒカルのエンディングソングもなかなか無駄なかった。ただ、春の雪と紅葉がなんとも?だったけれど久しぶりに醍醐味。

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このブログ記事について

このページは、ichikoが2005年11月23日 21:43に書いたブログ記事です。

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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