ichiko : 思いやり



    子供の持つ残酷さに、ある時、大人は気がつかないといけない。家庭であれば、親であってもまた、教育現場であれば教育にたずさわるものは、何故、そのことがいけないことかを教えなければならない。「無視する」ということが一番残酷なのだ。
  「実は彼が来週から暫く家庭の事情で休みをくれと言っているんだよ。深くは聞かなかったけど、子供のことだ」と友人が言った。彼の部下であるその人のことは、一度仕事をしたことがあり、私も知っている。「子供のこと?病気?」と訊くと、首を横にふり、「いいや、いじめだよ」と言う。「いじめ」とはなんということか!・・・・・・・。
  マスコミで騒がれていないから、無くなったわけではない。いつの世もあるものなのだ。親も悲しい思いをするが、本人の辛さは語れないほどにきついものだ。Оさんの息子さんも、毎朝、嘔吐を繰り返し、なんとか校門前に行っても身体が激しく痙攣してしまうという。中学という多感な時期に、心に受ける傷は深い。
  「彼が小学生の時に、釣りに連れて行ったことがあるんだけど、魚が釣れた時、目をキラキラさせてね、それはそれは喜んで。今もその目が思い出されるよ」と彼は辛そうに言った。

   子供は残酷だ。実は、残酷なことを言い、相手を傷つける。私にも経験がある。9歳の時、友人の弟が「小児麻痺」ということを言った。クラスの一部でそんなことが騒がれて、罪の意識もさほどないままに、相手に言う。そんな無知な残酷さ。そして、担任の教師に叱られる。強く叱責されるのではなく、何故そういうことを言ってはいけないのか?、相手に思いやりの心を持つことはどういうことなのか?先生は諄々とさとしてくれた。
  私は声が出なくなるほど泣いて泣いて・・・そして涙がかれた。いつも優しい目をした担任の先生に、思いがけない厳しい目で注意をされて、最初は身体が熱くなるほど吃驚したということもある。しかし、次第に自分が「相手の立場」になった時、元気に遊ぶ自分の弟を傷つけることを言われたら?と考えた。そして子供心に納得し、友人にそして友人の弟に詫びたのだ。
  親友の家に遊びに行った時、いつも以上に弟さんも仲間に入れて活発に遊んだ。心の中で「ごめんなさい、ごめんなさい」を繰り返していた。
  あの時、先生の言葉がなければ私は学校で勉強をそして遊んでいただけだ。今、当時担任だったT先生に心から感謝する。


   身体のことをさして、いじめる子供たちの未成熟な残酷さ。早く、教師は気づいてほしい。無視はしないでほしい。彼は必死に勉強して目指していた私立有名中学に入学したのだ。
まだ、小さくて成長していない心と身体が必死に泣いているんだ。

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このブログ記事について

このページは、ichikoが2006年1月29日 17:51に書いたブログ記事です。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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