ch05.エンタテイメント : 魂萌え・・・とは


   桐野夏生の「魂萌え 」がNHKの連続ドラマで放送されていた。主人公は、平穏な生活を送っていた59歳の専業主婦・関口敏子。この世界にごまんといる専業主婦を高畑淳子が演じ、夫の急死後にささやかな日常から戸惑う心を見事に演じていた。
   
  「初めて十割蕎麦がうまく打ててね。とても旨かったよ。」と言い、いつになく長風呂で、脱衣場で蹲るように転倒、心臓麻痺で呆気なく亡くなってしまう夫。享年63歳。後からわかるのだが定年退職後に、実は直ぐには自宅には戻らず10年間も続いていた愛人のもとを訪れていたのだ。
  死後にタンスの洋服にあった携帯電話が鳴るという設定も、面白い。それにしても最近はバラエティ番組で面白いキャラを披露している高畑淳子だが、演技力は抜群だ。凄まじい心の振れを演じている。繊細で且つ大胆。愛人の経営する蕎麦屋から出た後、激しい憎悪で真珠のネックレスをパッと引き千切るシーンもなかなか。そして夫の友人からの誘い。戸惑いながらも乱れる感情のために火照る心とカラダ。演技力はハラハラするほどに上手い。「お待ちしています」・・・だったか?ケータイメールの演出が今風であり、かつ小道具としてはいい。
  クライマックスでは愛人役の高橋惠子との10分以上に及ぶ激しくも静かなる決闘。感情の高まりで蕎麦屋の花瓶をたたき割るシーンもなかなかいい。スパニッシュ・ギターがこのドラマをひきたてて、十分に満足な仕上がりだった。実際、単行本の帯には「若い人には、まだ想像できない世界」とあるが、やはりその年齢にならない微妙な世界とともに・・・・現実世界においても見聞きする様々なコトガラを思い浮かべてみると・・・・・んっー・・・まさにイギリスの詩人・バイロンの言葉「事実は小説よりも奇なり」を感じ取る。

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このページは、ichikoが2006年11月 4日 20:58に書いたブログ記事です。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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