ch07.味 : 器の魅力 |
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今朝の新聞で読んだ。作家の曽野綾子さんが、陶器で商売をされている方が来て「窯元は壊滅状態」とい言う。その背景にどうも家庭で料理を作らなくなったためかと書かれていた。確かに、スーパーに行って食品売り場など見てみると、なるほどと思うことが多い。例えば刺身なども柄がプリントされたトレイにきれいに盛り付けされている。「これはどうするのだろう?」と思ってはみるが、そのまま食卓に出す家庭も多いときく。
「もう、最近はコンビニで買ってきたおかずはそのまま食べてしまうの。食器を洗う手間も省けて便利な世の中よ」と、一人暮らしのご夫人が言っていたのを思い出した。昔、「一人で暮らしているとねえ、鍋からそのまま食べてしまってハッとした。いけないいけないって、反省したのよ」なんて昔々、学生時代に一人暮らししていた友人の言葉も思い出した。コンビニでもサラダ、ご飯もの、ソバ類、グラタンやその他いろいろ。そのまま食卓に並べて、食べ終わったら捨てればOKというものばかりだ。1回そうしてしまうと、いちいち皿を出して盛り付けてなんて面倒なのかも知れない。
文京区の千駄木に、昔に顔なじみの陶器の店がある。大学病院に行った帰りは必ずのぞいてみる。小さな小さな店内に所狭しと陶芸作家のいろいろな作品が並んでいる。先日は大好きな織部の角皿を購入した。あの深い緑色が大好きなのだ。今日も、店をちょっとのぞいてみた。女主人がにこやかに出迎えてくれた。「先日の織部の皿、重宝していますよ」というと「まあ!良かったです」と微笑む。「和食、洋食問わず、どんな料理でもあいますねぇ」というと咄嗟に「どんなお料理を?」と聞かれた。あまりに咄嗟の質問に、一瞬たじろいでしまった。たいした料理なと゜作ってもいないし・・・・。「野菜の煮浸しとか、ちょっとした揚げ物も。そうそう、サンドウィッチものせましたよ」と言うと「まあ!」と妙に喜んでもらえた。不思議なものだ。皿ひとつで私の手間隙かけぬ料理さえ、素適に引き立つものなのだ。こんな生活の中の小さな小さな感動。伝えたいものだと思った。
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