ichiko : 親友

   ちょっとある事があり、先日久しぶりに学生時代の友人に電話をかけた。学校の教師をしているので、忙しいだろうからと思って夜分に自宅へ。
  「もしもし」というちょっとこもった感じの声が懐かしい。「元気?」というと一瞬、"あっ"と驚いたような間があった。「本当に御無沙汰しています!」と笑う。
  暫く話していると少し、彼女の声が次第に暗くなっている。「どうしたの?」と訊くと「実は耳の聞こえがどんどん悪くなってね、最近は鍼治療に通っているのよ」と言う。健康状態の事もあり、非常勤講師になってしまったとますます声の調子が暗くなっている。病院の先生には遺伝ということも考えられると言われ、しかし原因不明だということで、彼女の不安が手にとるように分る。
   「今、仕事忙しいんでしょ?忙しいだろうと思っていたのよ~連絡もしなくてごめん」と彼女が言う。「一昨年に会社作ったのよ」と言うと「やっぱりね!高校の時から、なんか絶対なんかやるって思ってた!」と声が明るくなってきた。
  

  時間がふっと、高校時代に戻っていた。性格はどちらかと言うと真逆か。「冬の白いマフラーを編んであげる!」といわれたものの、待てど暮らせどマフラーは出来上がらない。その冬が来て・・・・そして春がきて、だいぶ暖かくなるころ「これ」と言われて渡されたのは約束の白いマフラーではなく、少し灰色がかっていた。貸した本にはいつもお煎餅の粉がはさまっている。「何よ!これ!」としょっちゅう喧嘩となる。でも、せっかちでおっちょこちょいの私と違い、じっくり型の彼女の作るプリンの美味しさは本当に!格別。ああ、何もかもが懐かしい思い出だ。

  
  電話のところどころで「えっ?何?」と訊く彼女の健康がとても心配で、実は何日か眠りが浅い日が続いていた。ご主人を癌で亡くしてからも、教師という仕事も続けていた。多分、日々疲労やストレスも・・・・いろいろな事が原因のような気がする。私自身も出来る限りのことを親友にしてあげようと思った。
  「何をするのも健康第一だからね!」と言った言葉を聞き取れずいた彼女に、はっとしたが「元気が一番」と大きな声で言うと「そうね!ありがとう!」と言う声が返ってきた。そして「いち子ね、私、いざとなれば自宅で教室をひらいたっていいしね!」という言葉に胸が熱くなった。

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このページは、ichikoが2009年5月15日 08:32に書いたブログ記事です。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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