ch11.経済: 2010年2月アーカイブ

ch11.経済 : 見えない未来に

  発車のベルに慌てて、乗り込んだ電車の雑誌の中吊り広告に目をやると、そこには、バブル時代を生きた先輩はもう会社を去れという内容のタイトルがある。仕事の丸投げ、いいとこ取り、責任転嫁・・・もう言いたい放題である。もちろん、日々仕事をしている時間の中で、丸投げ、いいとこ取りなど日常茶飯事だ。腸煮えくり返ったなんてこともままある。心の中で「いい加減にして!」と叫ぶ瞬間だってある。
  しかし、何故、今の世の中は、人に対して優しくなくなってしまったのだろうかってつくづく思う。たとえバブル時代をぬくぬくと生きてきたかも知れない先輩諸氏、そしてまたその先輩諸氏は日本の高度成長を担った人々であろう。何故、現在のこんなにも酷い経済生活の中にあっても、まだ何となく?安穏としていられる幸せ・・・そんな事を考えたことはないのだろうか?

  
   このところ昭和4年に完成した小林多喜二の「蟹工船」をはじめ俄か、りバイバルブームである。今とはくらべものにもならない経済恐慌にあえぐ日本の状況下であった時代だ。そんな日本で人々の心を掴み、一大ブームを引き起こした「蟹工船」は現在、日本だけでなく、フランスや韓国、中国へと翻訳もされ、若者たちの心を掴まえている。
  とくに、多喜二は労働者を題材とする作品を次々に発表した作家であるが、当時の特高ににらまれ、ついには昭和5年に治安維持法違反容疑で逮捕される。弾圧の手を逃れながらの活動を試みるも再逮捕。リンチともいえる取調べをうけたのだろう・・・胸がぎりぎりするほどの壮絶な最期を迎えるのだ。

  
  小林多喜二が育ったのは北海道の小樽。そういえば、亀井勝一郎も北海道の函館出身であった。貧しい環境で育った多喜二とは違い、裕福な家庭に生まれた亀井勝一郎。その違いもあるものの、亀井も政治活動に身を投じ、治安維持法によって逮捕拘禁されている。

  別段、政治活動云々をいうわけではないか、今の政治を見ていて、せいぜい5年か10年くらいの「未来」を語るのがやっとではないか?50年、100年先の日本の未来さえ見えない今の世の中にあって、こうした昭和の若者を揺り動かした時代の思想というものに触れてみるのも良いチャンスなのかも知れないな。想像も絶するほどの時代を経て「今」があるという事だから。
  
  私の知人に「マルクス経済学」を専門としている人がいるが、以前は「今日日マルクスを教えるって・・・大変でしょう」などと言っていたこともあるが、この昭和の初期に多くの若者を激しく揺り動かした思想を、再び考える機会としてもいいのではないかと思うようになった。

ch11.経済 : 60年の重み

  人も60歳で還暦を迎えるように、やはり60年という歳月にはそれなりの重みがある。
  
  手芸り整地とも言われていた「キンカ堂」がその60年の歴史に終止符をうった。1945年に中古衣料品類販売業者として創業し、衣料、生地などファッション関連のほか、雑貨、食品販売も手がける総合スーパーだった。俄かには信じられなかった。
  "理由"を2008年のリーマンショック以来の消費低迷とかあれこれ言っても始まらない。どこも本当にデフレ不況の波を、それも大きな波をかぶっているのだ。街を活気づけていた百貨店が消えていき、ファミレスだってコンビニだって売り上げを落としている。

  手芸にそれほどのめりこんだことはなかったが、それでも手作りの洋服に「相応しいボタン」を、また手編みセーターの毛糸玉を探しに手芸店という存在は大きかったはずだ。今では、誰もがはんでおしたようなスタイルをしている。着古したら「捨てればいい」。それほどに既成のものは安価である社会なのだ。繕うとか・・・多分、こうした日本語も何れ消えていくのだろうか?

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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