ch07.味: 2006年7月アーカイブ


   今週の日曜日23日は、まさに「本日、土用の丑(うし)の日」。この鰻屋の宣伝は、江戸時代の蘭学者、平賀源内の考案。記録に残る広告コピーで最も古いものだ。、現代にまで受け継がれる源内の説得力はすごい!と感心するばかり。
  しかし、この土用の丑の日を前に、ウナギの高値が続いている。小売店などは価格維持に懸命だが、一部では値上げに踏み切ったという。いくら夏の風物詩といってもスーパーの店頭値ごろ感がなければ主婦は財布の紐をしめる。ちょっと老舗の鰻屋に行って・・・という気持ちもなえそうだ。
   「仕入れ値が例年より1割以上も高くなっているから」という背景には養殖ウナギの稚魚であるシラスの不漁があるという。出荷するまでには、通常半年~1年半の養殖期間が必要。そのため、1年以上前の不漁が今になって大きな影響を与えているのだ。且つ原油価格の高騰。養殖用ボイラーなどの燃料費アップは大打撃となる。
  ウナギの産卵海域はグアム島に近いマリアナ諸島。黒潮にのり日本列島に回遊してくるという。先日もテレビでウナギの産卵というのは殆ど見られないということを知った。特に台風や熱帯低気圧が通過する地点ではなかなかウナギが産卵場所を見つけられなかったらしい。
   しかし、日本人としてはなんともこの時期のウナギは食したい。随分前の話だが、新宿の某鰻店で、「天然鰻」という名前にひかれて、店内に入りカウンターに座り「うな重の上!」と頼んだことがある。「時間かかりますよ、大丈夫ですかぁ?」というちょっと気難しい表情の店主に「はい」と答えた。調理の途中で店主にあれこれと話しかけたが、彼は全く応答してはくれなかった。
・・・・本当に長い時間、待たされた。目の前に置かれた「天然鰻のうな重の上」。口にいれる。脂がのっている。ふっくらとして、口の中で蕩けていく。小骨が気にならない。こってりとしているのに軽い味だ。本当に旨かった。「旨い!」とただそれだけ。
  無言で食べ終えた。「お会計お願いします」と言った。店主が値段を書き込んだ紙を無愛想に渡してくれた。天然鰻のうな重上を食べ、体中が蕩けている私はその数字を見て、すーっと青くなっていった。


   本格的な夏が到来する前の空気のにおい。そんな季節の旬の味。日本人に生まれて本当に良かったと感じることが多い。
  江戸時代にタンパク質源のひとつとして広まったどじょうは、そんな季節の旬。特に今は卵をもっていて独特の旨さだ。そもそも江戸発祥の料理ではなく、古くから稲作地帯など各地で味噌汁などに入れて食べていたらしい。
  浅草にあるどじょう料理の老舗「飯田屋」さんでこの旬の味覚を友人と味わう。特に浅草は日光街道が江戸への物流ルートので、商人が朝早くどじょう汁で飯をかき込み、帰りはどじょうで一杯ということで賑わいを見せたそうだ。
  「どろくさいでしょ?」なんていう人もいるが、泥臭さは日本酒でぬく。酒は料理に欠かせない調味料だが、生きたきたどじょうに酒を飲ませているとも。体の水分が酒に置き換わって骨もで軟らかくなるそうだ。
 どじょうを底が浅い鍋に並べる。しょうゆベースの割り下で煮ながら、ぐつぐついったところでとりだす。箸がスッと骨まで入る。たっぷりネギと食す。牛蒡もどじょうによくあう野菜だ。ウナギのような脂っこさはないので、常温の樽酒が良くあう。

盛夏前の至福の時。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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