ch07.味: 2008年9月アーカイブ


  お洒落なランチタイムを愉しんでいるのはたいがいが女性だ・・・・と思う。豪華なフレンチを味わったあとなのだろうか?地下鉄・丸の内線内で「美味しかったわぁ~流石ねぇ~(有名シェフの名前)。もう、私、おなかいっぱいよ。今夜は鮭でも焼いて・・・ほほほ」と笑いあっている主婦たちを見た。
  それにくらべて、サラリーマンの多くはそんなに贅沢なんてしていない。特に、外食代のアップ。例えば、日本マクドナルドは8月に全国平均で2・5%程度値上げをした。9月には牛丼チェーンを運営する松屋フーズや、神戸らんぷ亭が一部商品の値上げをした。
  都心でランチをするとなると1000円はかかってしまう。お昼どきともなるとどこの飲食店も長い列だ。毎日毎日これを繰り返していたらかなり負担となる。だからサラリーマンの昼食代は確実に減ってきているのだ。GEコンシューマー・ファイナンスの4月調査では、今年は2007年より20円少ない570円。この減少は3年連続となるという。
  そんな中で、"弁当箱"が売れているそうだ。OLだけでなく、ご主人のものや、また自分自身の弁当箱を探す男性も増えているという。やはり小遣いの遣り繰りに迫られたサラリーマンが外食を控え始めのかも知れない。
  「あああ~最近は、揚げ物もしなくなったし、料理に手抜きばかりしているわ~」と呟くと「そんな事ないよ、お母さんは毎日毎日、私たちのお弁当を作ってくれたじゃないの!」と娘が言う。そうか、「必ず、手作りのお弁当を持たせてください」とPTAで担任に先生に言われたなぁ・・・・。毎日、朝5時くらいに起きて、健康であるように!と栄養と見栄え?を考えながら何年間も子どもたちのお弁当を作ってきたなあ。娘の言う"お弁当"という言葉が妙に心の中を熱くしてくれた。
そうかぁ!"食べることは生きること生きることは食べること"なんていい言葉のあった、魚戸おさむさんの『玄米せんせいの弁当箱』をぺらぺら捲ってみる。


  随分前にタバコはやめたのだが、お酒はどうしてもやめられない。アル中ではないが、飲まない自分を想像しただけで、何か胸の奥で何かがしくしく泣いている。哀しくなるのだ。しかし、お酒もそうなのだが、食事にしても10代の若者でもなければ、また激しいスポーツをしたり重労働でもしなければ、節制したほうがいいに決まっている。時折、グルメの友人のおなかを見ながら「あっ・・・・・ぁぁぁぁ」と思うこともある。
  先般、昔の仲間が何を血迷ったか?昔々その昔の写真などを持ってワイワイしはじめた。そこには、「誰?一体誰?」という若き日の姿があるわけで・・・・・・。「いち子さん、とうしたの?」なんて今さらいわれても「スミマセン」と言うだけだ。
  さて、理性的に?節制を始めて約2ヵ月が経過した。決して、無理はしていない。無理に食べることをやめただけただ。昔から"腹八分目"とはいうが、腹七から六分目くらいにしている。無理にマヨネーズやケチャップやソースもかけるのもやめた。素材の持つ味を楽しむようにしてみた。例えば大好きなブロッコリーも茹でる時に使う塩味だけ。やっぱり、「最高だよね~」とウキウキとマヨネーズつけるのもやめた。不思議となれるようになった。
  先日も、ある仕事の打ち合わせで食事をした時、その店で出してくれたよく煮た大根の"味"の異変に気付いた。何かが違うことが分かった。おそるおそる大将に伝えると、それを少し口に入れ「やややっっっ申し訳ない!」と言う。「いいんですよ」と何か気まずさを覚えた。言わなきゃ良かったとも思った。しかしそのまま残すことの方が良くない。「店始めて30年近く経ちますが、いやぁ、申し訳ない、申し訳ない」と大将が言う。「いいんです、いいんです」と、また気まずさでビールを飲み干した。


  要は節制を始めて、「舌」が変わってきた気がする。今まで気がつかなかったことに気付くようになった。そんな感じだ。不思議なことだと思う。
 そんな中、「食事をしながら、ちょっと今後のプロジェクトの話を」と言うことになり、牡蠣専門店にご招待された。牡蠣は本当に好き。昔、一度、あたったことがあり、うーうー唸りながら、半日入院した辛い思い出があるが、やはり好きでしようがない。
  所謂、産卵期に牡蠣は精巣と卵巣が増大するので食用とはならない。春から夏に旬を迎えるイワガキもあるが、昔から英名に「R」のつく月は美味しいと言われる。いよいよ旬なのだ。そして、この日は広島県の沖ノ島ヌーボーという牡蠣を食べた。"ヌーボー"という名前が気に入った!名前の通りの牡蠣!香りがよく、甘みがかり、それでいてさっぱりしている。他のメンバーは専用のソースやレモンを絞ってかけていたが、今回も私は何もかけず、そのまま潮の香りと牡蠣の甘さを愉しんだ。そして、冷えた辛口の白ワインが牡蠣の甘みをひきたてて旨い。皆、静かに牡蠣の旨さを味わっている。人は美味しいものの前で実に寡黙である。



  別に 文句を言いいたいわけではないのだが・・・・・「食育」だとか騒がれていても、やはり概念の世界で実際とは乖離していく一方である感じがしてならない。
  昔、台所にあったモノたちでなくなってしまったものは多いだろう。しかし、ある女性が「まな板ってホントに必要ですかぁ?」と聞いた時は言葉を失った。
  大学生の時、オーストラリアの留学生をキャンプに連れて行った。包丁が上手く使えず、野菜を切るのか、指を切るのか!ヒヤヒヤだった。カレーひとつ作るのにも大騒ぎ。食べる時はクタクタだった。唖然としたあの感覚を思い出した。その女性の顔を見ながら「まな板は必要です!」と心の中で叫んだ。こうした女性や、毎晩時間がないから「夕食はコンビニ弁当です」とか「私!三食ハンバーガー(某ファストフード店の名前は省略)でもOKですよ」なんて人々が「食育」の事業などしてほしくないと思うのはホンネだ。


  今、おもちゃでも本格的な料理や菓子が簡単に作れる「調理玩具」が好評ということだ。食材のアレンジや使った後に丸洗いできるので子どもにも大人も人気なんだそうだ。具体的な商品名はふせるが、例えばのり巻きや太巻きがつくれるのは面白いと思うのだが・・・・。
  はて、巻きすはどこへ行ったのだろうか。多分、「巻きす」がないという家庭もあるのだろう。なければ、使い方だって分からないだろう。勿論、毎日しなくたっていい。巻きすを使って、上手く巻くためにご飯の量とか巻き方の力の入れ具合やコツを一度でいいからチャレンジして欲しいものだとつくづく思う。酢めしのつくり方、具の味付け仕方などいろいろ。美味しい「味」は生涯、記憶に残るもの。今は、コンビニでも簡単に買える便利な世の中だが、太巻き、のり巻き、また、おいなりさんのつくり方など、親なら一度は子どもに教えたいものだ。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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