2005年6月アーカイブ

  一枚のカードが届いた。「オーダーサロンをオープンしました」という文字。
2年ほど前になるのだろうか、アイムという女性・主婦のための学校の卒業生の小川さんと校長の長井さんの経営する店で会った。控えめな楚楚とした美人の女性だった。その小川さんが、海の見えるオーダーサロンをオープンしたという通知だった。
7月のはじめ、自宅兼アトリエに是非来てくださいという内容だ。

  
  「何か見えますか?」と小川さんは、目をこらした私に訊いた。
  「見えるというより、聞こえたのよ、海の波の音がね・・・・」と私は言った。
彼女の背後になんとも心地良い、波の打ち寄せては引いていく音が聞こえ、そして、なにやら不思議な「音」までが聞こえていた。ジャン・・・・・?何?
 小川さんは、はっとした表情になって「私、海辺で育ったんですよ、それのことかしら?」と考え込んでいた。
  暫くして、私の耳の奥というより、頭のどこかで「ジャンホエホエ」と奇妙な音がした。このことを皆に言うと、大笑いしたあと、怪訝な表情で押し黙った。気になった私は台湾の友人にすぐ電話をして、このことを話した。すると、彼女は「ははーん」と言い、「名前かな?」という私に「そうかもね」と答えた。


  暫くは怪訝な表情だった小川さんは、その日から、「ジャンホエホエ」というネームを持つようになった。不思議な話だが事実。それから、お茶をしたり、食事をしたり。私は彼女のポテンシャルを信じていろいろ語った。アドバイスもした。その度に彼女は自信がついたのか、ヘアスタイルも服装も全く変り、美しさに磨きをかけていった。表情は輝いて、明るかった。発言も本当にはきはきと心地よいものに変わっていったのだ。


  その日も近いのだろう・・・・・漠然と私は感じていた。
そして、今、こうして手にしている一枚のカード。彼女の洗練された感性と手先の器用さで、美しいコスチュームが紡ぎだされていくのだろう。今、彼女は、女性を最高に美しく見せるコスチュームの作家になったのだ。小川さん、いやジャンホエホエ、サロンオープンおめでとう!

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  先日、プログで「びわの歌」の話を書いたところ、私の曖昧な疑問に、歌の先生(神楽坂女声合唱団のご指導をいただいている栗原先生)から大変大変、ご親切なメールが届きました。

-まど・みちおさんの詩なんですね。曲は磯部俶さんでした。

あっ!そうなんですか。「ぞうさん ぞうさん おはながながいのね・・・」で有名な詩人のまどみちおさんです!北原白秋に認めらてデビューしたまどみちおさんです!


さて、正しい「びわの歌」は次の通りです。(先生、本当に有難うございます。今、恥ずかしさで顔が少々火照っています・・・・・)


♪びわは やさしい
 きのみだから
 だっこ しあって
 うれている
 うすい にじある
 ろばさんの
 おみみ みたいな 
 はのかげに

 びわは しずかな
 きのみだから
 お日に ぬるんで
 うれている
 ママと いただく
 やぎさんの
 おちち よりかも
 まだあまく

なんと、ママといただくのは、ヤギさんのお乳でした!(ヤギをママと食べる?もしや、沖縄の歌か?なんて考えていた私。嗚呼、はずかしや)

栗原先生、有難うございました!

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  夜も更けていく頃、考えにつまってしまった時など私はコーヒーをいれる。ふっと香りに包まれると、いろいろなことを夢想する。既に、死語かも知れないが、「たまゆら」という言葉が私は好きだ。ほんの一瞬、暫しの間という意味する美しい言葉である。玉がかすかに触れ合うときに微妙な音がする、そんな微かな音。万葉集の「玉響きのふの夕見しものをけふの朝に恋ふべきものか」にででくる。玉かぎるとは本来は淡い光を意味する枕詞。その玉響を「たまゆら」と詠んだ・・・・美しい言葉の誤解。
  コーヒーの香りに包まれながら、もし珈琲店の女主人になったなら。窓から海の見える高台に店はつくろう。そう、店の名前を「たまゆら」にしよう・・・。訪れる客の何人かは店名の由来を訊くだろう。そんな時、窓の向こう、夕陽が沈む光景を見ながら、私はどんな説明をするんだろう?暫し・・・・時が経っていく。
 
  不意に時を劈く背後のざわめき。長い間、おしやべりしていなかった女友達が急に騒ぎ出した。「桃太郎」のストーリーが改変されたり、母親がエプロンをしているイラストが問題視されたり、昨今の行きすぎともいえるジェンダーフリー教育。一体、どうしたというのか?何を騒いでいるのというのか?
 ジェンダーフリーという思想運動が起こった背景には、女性の社会進出が進み、男女観も多様化した中で、従来の「男らしさ」「女らしさ」というステレオタイプによる評価基準を不合理に感じたり窮屈に感じる人が増えたということが挙げられる。実は、日本におけるジェンダーフリー運動は、アメリカ、ヨーロッパ、共産主義国のフェミニズム運動とは異なる部分も多い。というのも「ジェンダーフリー」という言葉は日本固有のものであること。日本で問題とされるジェンダーとはあくまでも「日本文化におけるジェンダー」であることを認識して欲しいものだ。

  さあ、もう一度、自分がこれからどう生きたいのか?後輩達に何を伝え、遺していくのか?軸足をしっかりさせよう。

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   家の近所を散歩していると、ある家の庭にびわの木があり、少し熟した実が揺れていた。ふっと小学校の低学年の時に習った「びわの歌」を思い出し口ずさんでみた。
 しかし・・・・口ずさんだものの・・・記憶している筈の歌詞が変だ・・・・なんか変だ・・・・

  ♪ びわわ 優しい木の実だから
     抱っこし合って揺れている(熟れている?)
     ママといただくヤギさんのお耳みたいな葉の蔭で

びわは、風に揺れいてるの?それとも熟れているの?
ママといただくヤギさんのって一体何?
( ヤギをママと一緒に食べちゃうの?まさか・・・・ )
ヤギの耳とびわの葉っぱって似ている?
(ちょっと違う気がするけど・・・)


 「びわの歌」は口ずさめば口ずさむほどに、疑問が疑問をよんでいく。多分、当時はきちんと歌っていたのかも知れないが、今は完全に曖昧だ・・・・・。

 タレントの島田伸介さんが童謡「赤い靴」の中で赤い靴を履いていた女の子が「異人さんに連れられていっちゃった」というところがあるが、これを「ひい爺さんに連れられていっちゃった」だと思っていたという話を聞いたことがある。
 私もかなりの年まで「どんぐりころころどんぐりこぉ~」と歌っていた。子供が小さい頃に「どんぐりこ」と歌っていて、それを聞いた姑に「どんぶりこじゃないのぉ?」と注意されて気がついたことがある。

  さあ、時間を見つけて童謡の歌詞を確認しにいかないと。びわの木を見る度に気になってしまう。

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  「アカデミー賞を受賞した作品だよ」と聞いていた。今絶賛上映中と月並みのコピーが流れている。女性ボクサーを主人公にしたクリント・イーストウッド監督・主演の映画「ミリオンダラー・ベビー」を観た。逞しいベビー役・マギーをヒラリー・スワンクが、引退したボクシングジム経営者をモーガン・フリーマンが渋く演じている。
  
  フランキー(クリント・イーストウッド)がマギーのトレーナーになるシーンの台本は、4ページにものぼり、通常のシーンに比べ長いものだったという。見終わった時、マギーが幸福感を掴み、輝きだしたきっかけのシーンだ。 映画の70%は脚本で決まる」と喝破したのは黒澤明だが、映画とは脚本次第かとつくづく思う
  あまりにハリウッド的ではない結末・・・というより、真の人との幸福とは一体何?と思い、私は暫くの間、席をたつことが出来なかった。これは「不条理」なのか?涙がこぼれた。しかし、これは「泣きたい」人のための映画では決してない。そしてこれから観たい人のために多くは書かない。

  結果しか評価しない現代の社会で生きていると「成果・結果主義」になっている。精神の幸福は得ることができないと思ったとしても、結果つまりお金に換わる世界が重要視される。そういう意味で、この映画のタイトルが何故「ミリオンダラー・ベイビー」なのかも見えてくる。貧困、安楽死、欲望、血縁・・・一つ一つに自分の気持がぶつかる。そしてほっと「絆」という言葉が残った。

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プロフィール

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吉田いち子
東京麹町生まれ。日本女子大学卒業後、サンケイリビング新聞社に勤務。2004年3月独立。
その後フリーランスで単行本取材・執筆。主婦、母親、会社員の慌しい?人生経験を生かした取材が得意テーマ。強みは「人脈」。名刺交換だけでなくまさに「魂」の交換?を理想にした密度の濃い人脈作りを目指している。2005年10月に首都圏在住の40歳以上のミドル層をターゲットとした生活情報誌『ありか』を創刊。2007年5月に、これまでに培ったノウハウを生かし編集企画・出版プロデュースをメーンとする株式会社『吉田事務所』を設立した。2011年春から豊島区の地域紙『豊島の選択』の取材・編集。

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