この日も寒かった。
少し歩き回ったもののやはり寒い。
「どこかであたたまろうよ」と友人たちと。
某私鉄沿線の駅から少し横みち入ったところに新規オープンの店があった。
店前にはいくつものお祝いの花々が飾られている。
「ほーっ」と一息つく。
「ここにしよう!」と、冷えたカラダを少しでも温めたくてワサワサと入店。
「いらっしゃいませ~」。
新規のオープンであれば夢とともにいろいろご苦労もあったろうと応援もしたくなるね。
カウンターに座りおつまみ2~3品と生ビールを注文。
ワイン、新酒、ウイスキーと飲み始め、なんたかんだと話も弾み・・・
いざ、帰ろうとしたとき「またどうぞ~」と明るい声がかえってくる。
オーナーもスタッフたちも若く、そして少し、たどたどしいところは決してプロの店とは言えないけれど、まあそれなりに・・・というところか。
外へ出ると「わっー」と、やはり寒気に包まれてしまう!
駅に向かって歩く途中、コートのポケットに手を入れた時だった。
「あれ?」
ほんわりと温かいものが手に触れた。
「何?」
取り出してみると、携帯用カイロにシールが貼られて、そこには手書きで「今日はご来店有難うございました。またお待ちしています」とメッセージ。
はて?と思った。
そうそう、入店と同時に入り口でコートを渡した時にハンガーにかけてくれた。
帰るまでの時間に、そっと「温かい気持ち」でポケットに入れてくれたのだろう。
あくまでも彼らにとっては、親切な気持ち、そしてグッドアイデアであったのだろう。
しかし、ふっとした気味悪さを感じた。
何度も手にその温もりを感じながら・・・
「やはり違うんじゃないの?」と私は思った。
いつまでもその気味の悪さの温もりだった。
人によって感じ方って違うと思う。
帰り際に「またどうぞ~」とでも言って
そっと、その温もりを手渡ししてくれればそれでよかったんじゃぁないの?ってね。