最近、書籍の購入は殆どがネットで注文してしまう。かなり古い時代のものでも意外と簡単に入手する事が出来る。
そんな中、先般、時間が少しあって書店内をぐるぐるまわり、ふと、新書コーナーのところへ来て「はっ!」と立ち止まった。「時の流れ」が耳元でザザザーッと聞こえた、そんな気がした。
あれは、高校1年か、2年生の時か・・・。そこが学校の図書館か、または家の近くの図書館だったか、それさえも記憶にないが、そのタイトルに強く惹かれ、読み進め、そしてずんずんと引き込まれたいった本があった。当時、新進気鋭と言われていた作家のものだった。昔は個人情報の管理も実に甘く、本の最後の著者略歴のところに自宅住所が書いてあったのだ。確かに昔からせっかち気質は変わらない。即効でその書籍の感想文を送った。何を書いたのか全て忘却している。しかし、数日して、その著者から葉書が来た。いきなり女子高生からの手紙。多分、当時はさぞ、驚いたと思う。
暫くして、秋になって某大学で講演会が開かれるから来ませんか?と通知をもらい、意気込んで出かけた。広い教室だった。後方の席に座ったが・・・目があった。講演会終了後、関係者たちに囲まれる中を振り切って、振り切って、走り抜ける。正門を出て、駅に向かって歩き始めた。何の言葉もかけずに歩いた。
不思議なことに・・・しばらくして「空腹である」ということに気付いたのか、駅前の吸い込まれるように喫茶店に入った。地下一階にあった喫茶店。店名さえ忘れている。ただ、背中を見ていた記憶。書棚があって水槽があって・・・という記憶は間違いかも知れない。何を話したかも忘れてしまっているものの、読んだら良いと勧められた書籍と作家名は覚えている。・・・あれが青春のひとコマなんだろうなと、今になって思う。思い出そうとすると何ともいえない不思議な感情がこみ上げてくる。
書店で、その作家の「老い」について書かれた書籍のタイトルに、暫し、時がコツコツと音をたてた。刻む音である。コツコツと、そう、思い出した。一気に書き上げた古い時計屋の話を送ったことを。どうしたのだろう?もう、なくなってしまっているかも知れないと。そして、敢えて問い合わせもしない。それほどに時間が経ってしまった。記憶の片隅に残像のようにある「青春」なのだと思う。
書店にて・・・いきなり思い出した「あの日あの時」。
・・・そんな日。