「すみません!ちょっと急いでください」と乗り込んだタクシー。
雨粒が大きくなってきた。
そして風が強い。
「春二番らしいですよ」と運転手さんが言う。
「二番なんてあるんですか?」と聞き「一体何番まであるんですかね?」と言うと、笑いあった。
どうも気忙しさと天候は関係してきてしまう・・・そんな感じがする。
そうか・・・「春の嵐」か・・・そう考えながら車に揺られていると、小学生の時に読んだ、ヘルマン・ヘッセの『春の嵐』をふっと思い出した。
何かが蠢いて、あの時、机に向かって小さな物語を書いた、そんな記憶がある。友達とのこと。どうしようもない気持ちで鉛筆の動きがとまった。
そうだ、あの時の気持ちはトシを重ねた今の自分ならわかる気がする。
タイムマシーンがあったなら・・・
あの小学生の自分の耳元に囁いてあげたい。
そんな気持ちになった。