2016年10月7日午後4時から郷土史研究家の伊藤栄洪先生のインタビュー収録。
大正大学表現学部の4年生3人と。
彼らは現在、卒業制作で忙殺。
そんな中での作業開始。
「記憶の遺産」収録である。
視覚として認識される伊藤先生の体力の衰えを感じつつ、一切の感情は払拭。
一秒でも過去の活動の一片でも思い出すと、余計な感情が噴出してしまう。
只管・・・只管・・・・収録。
これがドキュメンタリーの強さとそして惨さなのかも知れない。
終了後、学生たちと構成の打ち合わせ。
目の前で「(卒業制作にかかる)これからがちょっと大変に・・・」と屈託なく微笑む20代の若さがそこにあった。
夕刻の街へ。
携帯が鳴る。
「やはり母の体力がぐっとおちて・・・取材はご辞退したく・・・」とIさん。
Мさんは今年12月に101歳になる。
関東大震災を経験し、東京大空襲を経験し・・・
そんな記憶をカメラにおさめ、次の世代へと伝えたかった。
「いち子さん。もう・・・6月の時とは全く違っちゃって・・・」とIさんの声が次第に小さくなっていく。
「分かりました。無理はされないでください」
「・・・・・・・・」
「本当に無理だけは・・・」
「分かりました」
時間がない。
時間がない。
時間が本当になくなってきている。
とっぷりと暮れた。
人々は駅の改札口に吸い込まれていく。