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湯西川へ

5月の連休が始まった。朝一で栃木県へ向かう。五十里湖の湖畔にある「湖畔亭ほそい」で、人気の鴨つけそばを食べる。蕎麦も旨いが、鴨の出汁のつゆの旨さといったら!無口になるのはこんな時である。窓際の席。窓から見える直ぐそこにある五十里湖はなかなか美しい。東京で見慣れたソメイヨシノではなく、物静かな感じの山桜がまた美しい。

そのまま、湯西川温泉郷へ向かう。1185年、源平壇ノ浦の戦いに敗れた平家の落人、平清盛の嫡男である平重盛の六男・平忠実が家臣と共に、縁戚の宇都宮朝綱を頼り、関東へ下り、その後川治の鶏頂山に隠れしのんで生活していたと言われる。一族の婦人が男子を出生し祝事と喜んで5月の空にこいのぼりを上げたところ、源氏方の眼にふれ、一族は大敗。渓谷沿いに湯西川に至りその地を永住の地と定める。湯西川では今もなお鯉のぼりをあげないということを聞いていたが、この季節、やはり鯉のぼりは見えず。風習はいまなお続いているのか・・・と思う。

湯西川の某鄙びた温泉宿に泊まる。露天風呂に何と・・・桜の花びらが舞い落ちる。川のせせらぎ。至福の時間が湯けむりとともに過ぎていく・・・。夕食は乾いた喉に冷えたビールで潤してから、珍しい熊鍋を賞味。熊はくさいというイメージがあったが、何とも言えぬほどの美味である。脂身に見えるがなんでもコラーゲンたっぷりであるとのこと。「少しはきれいになれるか?」とほくほく喜んで食べる。囲炉裏端で、炭がバチバチと燃えている。優しいあたたかさ。そして、身が引き締まったヤマメも旨い。アタマから丸ごと食べられる。ああ!酒がすすむ・・・午前零時とか、都会時間が私の頭の中にはなくなっている・・・そして爆睡。

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