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変化 | ichikoTV ichikoTV

変化

変化・・・嫌いではない。

しかし・・・

昔から街に溶け込んでいた珈琲専門店などがなくなって、失礼な言い方だが気軽な立ち飲み屋などにかわっているのを見ると、ただただ唖然とする。好きだった席も失われた空間でしかない。

 

自宅の近くに鬱蒼とした“ところ”があった。いつからあったのか?近所でも知っている人がないほどに古い、その壊れそうな空き家は雑草に日々、覆われていくだけだった。その空き家が「橙の家」と呼ばれていることは知っていた。その庭には橙の木が象徴のように植えられていた。ある一人の“女性”が住んでいたということは訊いたことがある。

随分前の話だが、街の散策のような文化イベントで古い家を訪ねる企画があり、参加したことがある。一度だけ、その古家に入った。玄関から室内へ。昔は主がいたのだなという形跡はあった。写真などもそのままで・・・ああ!これが主人かと。その人が来ることを待ってお妾さんが日々暮らしていたのか?と想像した。居間?から庭らしき方向を見ると、その橙の木はよく見えた。奥へ行くと小さな台所があり、勝手口へと続く。その横に二畳ほどの女中部屋か?静かな女性たちの声が聞こえるようだった。日々、雑草に覆われる空き家はずっとずっとそのまま、ある景観して鎮座していた・・・

先日のこと。息をのんだ。知らぬ間にその空き家は取り壊され更地になり、その橙の木は無残にも切り倒されようとしていた。

「あっ・・・」そこには何もなくなり・・・ぽつんと更地が残る。3人の作業人が煙草をくゆらせている。何かぽつぽつと話しながらその紫煙は蒸し暑い空気と溶け込んでいった。

 

そしてまた一軒。

少し離れたところにも、昔はパラの季節になると、色とりどりのバラが咲き乱れる屋敷があった。手入れされたパラは誇らしげに咲き、そして時を刻みながら花弁をおとしていったのだ。

ある日・・・主を失った屋敷は取り壊され更地になり、勿論、パラたちも消えていった。そしてそこにはセンスのいいお洒落なワンルームマンションが建てられた。敷地いっぱいに。「ああ、これほど広かったのか」と思うほどにみっちりとその建物が地べたを支配していた。

 

街というには小さい・・・人々の住む、小さな小さなエリアが変貌して、そして昔、そこに何があって誰が生活していたのかなど全く霧散してしまうのだ。記憶の破片が果たして正しいのか?など検証もしないままに、小さな小さな街が変わっていく。

 

 

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